CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)って、どんな病気?
CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)――
この病名を初めて聞いた時、私自身も「なにそれ?」という状態でした。
診断されるまで、まったく耳にしたことのない病気でした。
きっと、今これを読んでいるあなたも、同じように「CIDPって一体なに?」と調べている最中かもしれませんね。
※これは一般的な医療情報です。病気の性質上、症状は一人ひとり違います。 治療や症状についての具体的なことは、必ず主治医とご相談ください。 当時の日記を元に書き起こしていますので最新の情報ではないこともあります。ご承知おきください。
「全国CIDPサポートグループ」によるCIDPの解説
情報収集をする中で、「全国CIDPサポートグループ」の説明がとても分かりやすかったので、専門的な言葉も出てきますが一部を抜粋してご紹介します。
◇どんな病気?
CIDPとは、chronic(慢性)、inflammatory(炎症性)、demyelinating(脱髄性)、polyneuropathy(多発神経炎)の略称で、2ヶ月以上にわたって進行する四肢の筋力低下と感覚障害を主な症状とする末梢神経の病気です。
私たちの体には、脳や脊髄からなる「中枢神経」と、それ以外の「末梢神経」があります。 CIDPは、この末梢神経組織に炎症が起きることで生じる、慢性の病気です。
末梢神経は、まるで電気コードのように、電気信号を伝える「芯」の役割をする 軸索(じくさく)と、それを外から覆って絶縁カバーの役割をする 髄鞘(ずいしょう)からできています。
CIDPでは、この髄鞘が炎症やダメージを受け、髄鞘を作っている「ミエリン」という物質が壊されてしまうんです。ミエリンが壊されることを「脱髄(だつずい)」といいます。脱髄が起こると、神経の電気信号の伝わる速度が遅くなったり、途中で遮断されたりするため、末梢の四肢に様々な症状が現れる、というわけです。
◇どうしておこるのか?
CIDPのハッキリとした原因はまだわかっていませんが、自己免疫疾患の一種だと考えられています。
私たちの体は、免疫機能によってウイルスや細菌などの外敵から守られていますよね。ところが、何らかの原因で免疫のバランスが崩れると、免疫システムに誤作動が生じ、間違って自分の体を攻撃してしまうことがあるんです。
CIDPは、自分の末梢神経の髄鞘(ミエリン)を、まるで外敵であるかのように誤って認識し、攻撃してしまうことによって起こるのではないか、と考えられています。
◇患者数はどれくらい?
CIDPは、患者数が少ない 稀な病気(希少疾患)です。
2005年の調査では、全国推定患者数は2,000人ほどで成人10万人に対し2.17人、小児は0.28人と報告されていましたが、2021年の厚生労働省の研究班による調査では、全国推定患者数は4,180人とされています。人口10万人あたりの有病率は3.31人というデータも出ています。
◇どんな症状?
CIDPで最も多く見られるのは、手足の動きに関する障害(運動障害)と、触った感覚に関する障害(感覚障害)です。
具体的には、こんな症状が挙げられます。
- 手足に力が入りづらい(脱力感): 何をするにもだるく感じたり、重いものが持てなくなったりします。
- 転びやすい(歩行障害): 足が思うように上がらなかったり、バランスが取りにくくなったりして、つまずきやすくなります。
- 物をうまくつかめない(握力・巧緻性の低下): 細かい作業が難しくなったり、ペットボトルの蓋が開けられなくなったりすることも。私の場合は、ボタンがしめにくくなったりタバコが指から落ちたりということがありました。
- 触った感じが分かりづらい(感覚鈍麻): 物に触れても、感覚が鈍くてよく分からなかったり、温度を感じにくくなったりします。
- 痺れやちくちくした痛みを感じる(感覚異常): 手足が常に痺れていたり、針で刺されるようなチクチクとした痛みを感じたりします。
また、これらの症状は、手足の先端の方(四肢遠位部)に、左右対称に起こることが多いと言われています。また腱反射(ひざを叩いた時に足がピョンと跳ねるような反応)が弱くなったり、全く出なくなったりすることが一般的です。
急性の脱髄性末梢神経炎である「ギラン・バレー症候群」が、発症から数日の間に急激な筋力低下を起こすのに対し、CIDPの場合は、数週間から数ヶ月以上にわたって緩やかに症状が進み、いったん治まった症状が再発・再燃を繰り返すのが特徴です。
治療によって症状は改善されますが、日常生活に不快な症状が残ることもあります。過労やストレス、風邪などが再発の引き金となることもあるので、注意が必要です。少数ですが、慢性的に進行する患者さんも見られ、長期の経過で障害が残るようになると、筋萎縮(筋肉がやせてしまうこと)が問題となってきます。
「私って、典型的なCIDPじゃないかも?」と感じたら
CIDPには、いくつかのタイプ(病型)があると言われています。
典型的なCIDPの場合、手足の症状が左右同じように現れ、体幹に近い肩や太もも(近位筋)と、手先や足先(遠位筋)の両方に同じような障害が出やすいのが特徴です。
でも、「私の症状、ちょっと違うかも?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。CIDPには、「バリアント」と呼ばれる非典型的なタイプも存在します。
- 症状が左右非対称に現れる(多巣型)
- 手先や足先の症状が特に目立つ(遠位型)
- 体の片側の一部だけに症状が出る(限局型)
- 感覚の痺れはなく、動きの麻痺だけが強く出る(純粋運動型)
- 手足の力が落ちることはなく、感覚の痺れだけが強く出る(純粋感覚型)
など、本当に様々な現れ方があります。
その他、多くの人が経験する症状
他にも、CIDPの患者さんの多くが経験するのが、筋力低下による疲れやすさです。少し動いただけでもクタクタになってしまったり、以前のように活動できなかったりすることに悩む方も少なくありません。
また、体の位置が分かりにくくなる位置覚の異常や、筋肉の痛み、震えを伴うこともあります。稀なケースではありますが、脳神経症状(顔の麻痺やものが二重に見えるなど)や、自律神経症状(めまい、立ちくらみ、発汗異常など)が出る患者さんもいらっしゃいます。
こんな風に並べてみると、免疫疾患であり神経疾患でもあるため、様々な症状が出現し得るのですね。もし、今、ご自身の症状に「あれ?」と感じているなら、これらの情報が、あなた自身の状態を理解するきっかけになるかもしれません。
私の主治医の分かりやすい説明
上記の説明、分かったような、やっぱり少し難しいような…(笑)
家族に説明する時など、正直ちょっと困ってしまうこともありました。
なので、私の主治医が教えてくれた、もっと分かりやすい説明を皆さんにもお伝えしますね。
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にゃこりんさんの中の(病原菌などをやっつけるはずの)免疫の一部が、なぜか理由は分からないけれど「勘違いな子」になっちゃって、 末梢神経(=電気コードに例えると、軸索=電気信号を伝える芯、髄鞘=それを覆う絶縁カバー)の髄鞘を外敵として攻撃するようになってしまう。 だから、穴の開いた絶縁カバーでは電気信号がうまく伝わらなくなって、感覚がおかしくなったり、動きが悪くなったりしてしまうんだよ。
原因はまだ解明されてないし、残念ながら完治もしない病気です。
それでも、進行しないようにするための治療法はあるから、一緒に探していきましょう。
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この説明を聞いた時、私も「なるほど!」と腑に落ちた気がしました。
症状が出始めてから、この「CIDP(慢性炎症性脱髄性脱髄性多発神経炎)」と診断されるまでの1年8ヶ月。
その間の不安に比べたら、難病とはいえ病名がハッキリしただけでも、私にとっては精神的にずいぶん楽になりました。
そんな私の、病気との出会いから現在まで、様々な「あれこれ」を、このブログで綴っていこうと思います。
同じように不安を抱えるあなたの気持ちが、少しでも軽くなるきっかけになれば嬉しいです。
Wrote this article この記事を書いた人

nyacorin23 女性
2011年9月発症、2013年5月CIDPと診断。 2021年10月Ivig終了。2022年7月寛解。 2024年11月通院卒業。 治療期間8年、発症から卒業までは13年。 CIDPになって失ったもの、残っていたもの、新しく手に入れたもの…… 私の一部となって私を作り上げ、これからも私らしく生きていく。